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ED診療のコツ

産婦人科医がみるED(2)

監修:小塙医院 理事長 小塙 清 先生

不妊治療は二人三脚

茨城県小美玉市の小塙医院は、不妊治療の実績が豊富な施設で、婦人科の他に泌尿器科、内科を併設しています。「夫が協力してくれない」と訴えて受診する、ED患者をパートナーに持つ女性の気持ちや対応法、ED治療の実際、泌尿器科と婦人科の連携の重要性などについて、婦人科の立場から伺いました。

監修:小塙医院 理事長 小塙 清 先生

男性不妊症の増加が目立つ

当院では、不妊症の相談は夫婦そろって婦人科を受診するケースが多いのですが、約30%はED関係で悩んでいますね。結婚してから1回も性生活がないという夫婦が約10%。残り約90%のうち、ほとんど性生活がないケースと完全なEDが約半々で、思った時にうまくできないなど、EDでない場合も含めて性生活がない夫婦は約40%でしょうか。

最近は、男性不妊症の患者さんが圧倒的に増えています。実際には女性不妊と男性不妊の割合は同程度なのかもしれませんが、以前は女性が多かった初診来院が、最近では徐々に男性側の意識も変化してきたためか、夫婦で来院するケースが増え、男性不妊が明らかに目立つようになったのだと感じています。

泌尿器科の患者さんのうち、EDは約30%。約50%は精子減少症、精子無力症など精子の問題が疑われます。残りの約20%は排尿の障害や腎機能障害、膀胱障害、前立腺肥大症など純粋な泌尿器科の患者さんです。

晩婚化と男性の性欲の変化

不妊の原因は、まず晩婚化です。不妊治療のために来院する患者さんの年齢は35〜41歳くらいですが、これは20年前に比べて10年遅くなっています。女性は35歳を過ぎると流産、染色体異常など負の要素が増えますが、赤ちゃんが欲しいと思った時点でかなり厳しい状態になっているので妊娠しにくいのは当たり前です。

近年、男性の性欲が低下していることも不妊の一因と考えられます。性交ができないわけではないのですが、結局は何となくしない、できないという人が非常に多いです。気力の問題もあるかもしれないですね。たとえば、排卵日を指定して、「この日は確実に性交渉を持っていただかないと月1回のチャンスがなくなりますよ」と言っても、うまくいきません。

婦人科と泌尿器科の連携

当院の泌尿器科の患者さんのうち、婦人科経由で受診する方は約5割です。前立腺肥大症や、血液の流れが悪くなる精索静脈瘤はEDの原因になりますから、EDと診断された場合はまず、器質的疾患がないか確認します。

また、性生活が全くない、ほとんどないという患者さんには、心理士と泌尿器科医がカウンセリングを行います。婦人科で女性を交えて話をすることもあります。婦人科医、泌尿器科医、心理士の3人がじっくり話を聞き解決策を見つけていくのですが、基本は夫婦一緒に不妊について考えてもらいます。

患者さんが相談しやすい工夫

通常の相談は診療室で行いますが、深刻そうな場合は別途時間を設けてカウンセリング室で行うなど、相談しやすい環境づくりを心がけています。

1階の婦人科は女性ばかりですので、男性はちょっと入りにくいかもしれません。そこで、男性の相談は女性と出会う心配のない2階の別室で行い、心おきなく話してもらえるようにしています。

また、茨城県産婦人科医会を介したメール相談も行っています。2回目までメール相談が可能で、3回目は不妊相談センターに誘導します。医師や心理士が県庁や福祉会館などに出張して、週1回1時間の無料相談を行っています。メールでの相談頻度は高く、私の場合は1日1件ほど相談を受けています。

低用量治療薬の処方からスタート

カウンセリングでは、はじめに「ED治療薬を使っていますか?」とずばり聞きます。薬の存在は知っていても副作用が強い等の誤解があり、使っていない人がほとんどなので、「試しに飲んでみてください」と低用量を処方します。使っているうちにいつの間にか薬が要らなくなったという人が圧倒的に多く、男性の約7割は習慣的に性交が可能になります。そうなればしめたものです。

予測した排卵日にタイミングを合わせて性交渉を持つよう指導し、半年ぐらいで妊娠できなければ、次は精密な精液検査を行います。検査結果によって、そのままタイミング療法を継続するのか、それとも人工授精や体外受精にステップアップするのか判断します。あとは、どんな方法を使ってでも早く子どもが欲しいのか、タイミング療法で妊娠できなければ諦めるのか、ご夫婦の希望を尊重します。

カウンセリング対応のポイント

一番問題となるのが、男性が受診を拒否するケースです。その場合、カウンセリング室で面談を行います。

面談でまず確認することは「本当に子どもが欲しいのか」ということです。次に「奥さんのことを本当に想っているんですか?何が目的で結婚したのですか?」と質問します。そうやって男性を挑発、刺激することで、夫婦で話し合う機会を持ち、その結果治療に理解を示してくれることが多いです。

ほとんどの男性が「僕も子どもは欲しいです。何をしたらいいですか?」と質問します。子どもを作るためには、排卵日1日でいいので仕事を控えるなどして、しっかりと体調を整えて性生活に臨むよう指導します。人工授精や体外受精ならばマスターベーションで済みますから、たった1日だけ協力してもらうよう伝えるのです。

非日常の時間が有効なことも

一方、女性がご主人にご不満がある場合は、その1日だけでも少し化粧をするなどして、男性が心惹かれるような外見を作るようアドバイスします。それでうまくいったという話を聞くことも多いです。

それから、不妊治療を1ヵ月休んでも構わないので、少しおしゃれをして三ツ星レストランで食事をするとか、温泉に泊まりにいくことも勧めます。携帯電話も通じない、スマホもテレビも見られないような南の島で、二人きりで非日常の生活をすると、一緒に寝ようということに自然となってくるものです。

泌尿器科でも、女性の年齢を意識した不妊治療を

小塙医院

男性は60歳でも妊娠できる精子を持っていますが、女性は年齢が妊孕性に影響します。卵子は生まれた時から老化が始まっており、35歳を過ぎると老化が急激に進みますから、若いほど良い状態で妊娠できる確率が高くなります。不妊治療では、その点を踏まえて治療計画を立てる必要があります。

不妊治療は夫婦二人で成り立つものなので男性か女性、一方だけが改善してもうまくいきません。男性が5年かけてEDを改善したとしても、女性が40歳になってしまうと妊娠は難しくなります。女性の妊孕性を視野に入れ、ある程度男性の症状が改善されれば、治療途中であっても、体外受精や顕微体外受精など高等技術を用いたART治療(生殖補助医療)を考慮することも大切です。男性の患者さんに対しては、夫婦二人で不妊治療に臨んでいることを意識するよう指導してほしいと思います。

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