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ED診療のコツ

内科医がみるED

監修:西内科・循環器科 院長 西 征二 先生

患者背景

西内科・循環器科での2003年8月の調査では、230名のED患者さんが受診されており、その半数が50〜60代です(図1)。合併症別でみると高血圧が最も多く、ついで糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などがあげられます(図2)。1999年に鹿児島県内の医療機関を対象に行ったED診療の現況に関するアンケート調査でも、50〜60代が圧倒的に多く、高血圧、糖尿病、高脂血症を合併している患者さんが半数を占めていました。

以前、40歳以上の高血圧患者さんにEDに関する問診を行ったところ、68%にEDの疑いがありました。そのため、40歳以上でEDを合併しやすい生活習慣病をもっている患者さんには、「男性更年期障害の1つであるEDを知っていますか?」などと積極的に問いかけています。

ED患者の年齢分布

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[図1]ED患者の年齢分布
(西内科・循環器科での調査結果)

ED患者の年齢分布

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[図2]ED患者の合併症の種類と割合
(西内科・循環器科での調査結果)

ED診療の流れ

初診では、問診票とIIEF5スコア(簡易型国際勃起機能スコア)により、EDの原因や合併症などを検討して診断を行います。そして、治療方法を患者さんに選択してもらい、薬による治療を希望された場合は、保険外診療であることを説明した上で、安全性面のチェックのための検査を行います。検査は患者さん全員に、血圧と脈拍の測定、検尿、血液検査、心電図検査を行っています。ただし、人間ドッグなどで1〜2年以内に異常が認められなければ、血液・心電図検査を省くこともあります。検査結果よりED治療薬処方の適応、安全性に問題がなければ直接薬を手渡し、薬の作用機序・有効性・安全性・副作用について説明します。同時に、医療費を徴収します。

再診では、問診により有効性と安全性を確認しています。ED治療薬無効例に対しては原因を検索して対処しています。

また、表1のような患者さんは、専門医へ紹介しています。

ED診療の流れ

[図3]ED診療の流れ
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表1 専門医へ紹介すべき症例
  • 薬剤抵抗性の重症虚血性心疾患および2次性低血圧の症例 → 循環器科
  • 難治性糖尿病で神経障害の高度な症例 → 内分泌・代謝科
  • 抗うつ気分障害の強い症例(心因性ED) → 心療内科
  • 脳血管障害後遺症の症例 → リハビリテーション科
  • 慢性呼吸不全の合併症例 → 呼吸器科
  • 重症の肝・腎障害の合併症例 → 肝・腎内科
  • 骨盤内臓器(前立腺・膀胱・直腸)の術後症例 → 泌尿器科・消化器外科

ED診療の流れ

循環器内科の外来診療で対象となる疾患としては、高血圧、高脂血症、虚血性心疾患、不整脈、慢性心不全などがあります。中でも、高血圧と高脂血症は日常診療で最も頻度の高い生活習慣病であり、動脈硬化の最大の危険因子でもあります。ED診療では、動脈硬化の危険因子と心血管系合併症の診療は不可欠となります。

ED治療薬を処方する際、まず、添付文章の禁忌例に該当しなければ、処方が可能かどうかの安全性面のチェックを行っています(図4)。通常、50歳未満で、心筋虚血を疑わせるような要因がなく、糖尿病を併発していなければ、薬を処方しています。

ED患者の安全性面のチェック(禁忌例を除く)

[図4]ED患者の安全性面のチェック(禁忌例を除く)
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循環器疾患をもつ患者さんに対しては、基礎疾患の適正な管理を行った上で、循環器疾患用治療薬の安全性と薬物相互作用についての検討も必要です。また、高血圧の患者さんでは正常血圧者より3倍もうつ病併発率が高いこと、虚血性心疾患の発症と予後の悪化因子として抑うつ気分が深く関与していることを考慮すると、心因性EDへの配慮と治療も重要です。

1. 高血圧症

高血圧の治療中で、服用中の薬剤が1剤である場合はED治療薬を処方していますが、2剤以上の場合には、ED治療薬1回服用量(低用量)でチャレンジテストを行い、1時間後の血圧測定で収縮期血圧90mmHg以下、拡張期血圧50mmHg以下に血圧が低下しなければ、ED治療薬を処方しています。コントロール不良の患者さんでは、血圧をコントロールした後にED治療薬を処方しています。降圧薬がEDの原因になることがあるので、抗動脈硬化作用や血管内皮機能の改善が期待できるアンジオテンシンII受容体拮抗薬、持続性Ca拮抗薬、ACE阻害薬を使用しています。

高血圧の患者さんでは、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症などの動脈硬化の危険因子をもつことが多く、狭心症などの心血管系合併症を有することもあるので、ED治療薬の投与は低用量から開始しています。

2. 低血圧症

収縮期血圧90mmHg未満では原則的に禁忌とし、本態性低血圧症では、この基準値の境界域の症例も除外しています。特に、2次性低血圧症(慢性心不全、肺性心、陳旧性心筋梗塞症、拡張型心筋症などの器質的な基礎疾患を有する症例)では、血圧値の他に心機能の評価を行った上で、慎重に投与しています。

3. 脂質異常症

高脂血症は動脈硬化および虚血性心疾患の危険因子でもあるので、ED診療の際に、高脂血症の重症度と治療の有無、心血管系合併症を検討することが大切です。特に、家族性高コレステロール血症の患者さんでは、高度な冠動脈狭窄を有し、重症虚血性心疾患を早期に発症すること、進行性であることが特徴なので、十分に病態を把握した上で、慎重に投与しています。

高脂血症治療薬のスタチン系製剤は、脂質降下作用とともにアテローム硬化形成抑制作用、血管内皮機能改善作用、内皮型NO合成酵素の活性亢進など多面的な作用をもつので、ED治療薬の有用な併用薬となります。

4. 虚血性心疾患

硝酸剤あるいは一酸化窒素供与剤を服用している患者さんや不安定狭心症の患者さんでは、ED治療薬は禁忌です。しかし、安定狭心症(6ヵ月以上にわたり硝酸薬舌下錠の使用がない症例)であれば、硝酸薬の服用から24時間以上の休薬間隔をおいた後に、慎重投与としています。陳旧性心筋梗塞でも、性生活に耐えうる運動能力があれば慎重に投与しています。

心機能の評価は、心電図検査、心エコー図検査とともに、必要に応じてヒト脳性ナトリウム利尿ポリペプチド(BNP)測定、ホルター心電図検査、トレッドミル運動負荷心電図検査を行っています。

性行為の運動能力の簡便な評価法は、階段を1階から3階まで休まずに昇ることができれば性行為可能と判断しています。

5. 不整脈

発作性頻拍症(上室性)、発作性心房細動、頻拍発作をともなうWolff-Parkinson-White(WPW)症候群では、発作の頻度、持続時間、心機能に関する個別的な検討を行っています。また、心室性頻拍症、Brugada症候群では、発作時に血圧低下や心拍出量の低下をおこすことがあるので、ED治療薬は禁忌となります。洞機能不全症候群や高度房室ブロック、頻発性期外収縮(上室性、心室性)では、不整脈を治療した後にED治療薬の適応を慎重に検討しています。

クラスIA(ジソピラミド、ピルメノールなど)やクラスIII(アミオダロン、ソタロールなど)の抗不整脈薬を投与している患者では、ED治療薬との併用によりQTc延長の増強がみられるおそれがあるので、併用禁忌とします。

6. 心筋症

心臓突然死(非冠動脈疾患)のリスクが高い肥大型心筋症(特に家族性、閉塞性)、拡張型心筋症では、ED治療薬は禁忌となります。非閉塞性の肥大型心筋症、心筋炎後心筋症、川崎病後遺症などは心機能に異常がない症例もあり、適応につき検討の後に慎重に投与しています。

7. 弁膜症

軽症の僧帽弁逸脱症など心機能に問題のない場合はED治療薬の適応を考慮しています。潜在性心不全、動脈性塞栓症、感染性心内膜炎、不整脈の既往および併発した症例では、基礎疾患の十分な検索と治療を必要とするので、循環器専門医へ紹介しています。

問診のコツ

EDはプライベートな問題であり、特に女性には知られたくないものです。そこで、患者さんが女性スタッフなどの周囲を気にせず話ができ、また、プライバシーを保護するために、院内のレントゲン室などの個室を利用しています。

かかりつけでEDの疑いがある患者さんには、「更年期障害の1つであるEDを知っていますか?」などと問いかけてみて、関心を示した場合はさらに詳しく説明しています。既に患者さんとの信頼関係ができているので、問診は進めやすいと思います。

ED治療のために来院された患者さんには、主訴や現病歴、既往歴、家族歴、EDの背景因子などを聞き、保険外診療であること、治療上の留意点などについて詳しく説明します。

また、再診時には電話予約を主治医宛に直接連絡してから受診するように指示しています。

問診のコツ

高血圧や心疾患の患者さんの中には、ED治療薬は服用できない、危険だと誤った認識を持っておられる方が多く、医師から積極的に薬の安全性と有効性について説明する必要があります。私はED治療薬の開発の経緯から説明し、安全であることを伝え、服用の際の注意事項や副作用についても説明しています。薬を処方した方には、服薬の注意点と承諾書(図5)に署名いただくようにお願いしています。

また、初診の際、患者さんに同意と説明を得るために、当院では独自のファイル(問診票、ED治療の実際と留意事項、患者さんの承諾書)を作成しています。

服薬への理解を深めていただくため、当院の待合室には、ED関連のポスター、患者指導箋とともに、薬剤の現品を掲示しています。また、検査内容や薬の費用を記載したポスターも掲示しています(写真)

服薬の注意点と承諾書

[図5]服薬の注意点と承諾書
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待合室の風景

[写真]待合室の風景

スタッフ教育

職員の間でも経口治療薬を「ED 治療薬」、患者さんを「ED患者さん」として呼称にも配慮しています。ED診療においては、患者-医師関係の直接的な絆を強くし、コメディカルの側面的なサポートをえながら実施していくことが実際的だと思います。

ED治療のメリット

ED治療薬による治療結果に対する患者さんの満足度は非常に高い。患者さんから「おかげさまで良くなりました」と感謝されることが多く、医師冥利に尽きます。また、ED治療を受けることで患者さん自身も血圧や血糖の管理に熱心に取り組むなど、高血圧や糖尿病など合併症に対する治療意欲が高まるようです。ED治療は「1つの薬剤にて多面的な効果が得られるもの」と感じています。

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