


EDの経過・発症に本研究で使用されている降圧薬による影響は認められなかった。
しかし高リスク患者の前向きコホート研究として興味深い知見を得たのでその部分のみ要約した。
脳・心血管危険因子ならびにアテローム性動脈硬化症と勃起不全(ED)は関連があるといわれているが、EDの存在が将来の脳・心血管系疾患を予測できるかどうかは不明である。われわれは、EDによって死亡率および脳・心血管系疾患の転帰が予測できるかどうかを検討した。
本研究は、以前に報告されている主研究ONTARGETおよびTRANSCENDのサブスタディーとして行った。本研究には、主研究に参加した 22,168例中1,549例の男性患者が試験に組み入れられた。ベースライン、2年後、4年後にIIEF-5によりEDの評価を行った。IIEF-5で 5-7点は重症ED、8-11点は中等症ED、12-16点は中等症〜軽症ED、17-21点は軽症ED、22-25点はEDなしとした。主要評価項目は、脳・心血管死、心筋梗塞、脳卒中、および入院を要する心不全からなる複合転帰とし、他の評価項目は、全死亡、と主要評価項目の個々の転帰とした。




対象ならびに患者背景:ベースライン時、2年目、および最後から2番目の追跡調査来院時に1,549例の患者からED質問票を回収した。そのうち、すべての質問票に回答したものは、89.9%、全く回答がなかったものが1.9%であり、ベースラインでEDの評価ができた1,519例を解析対象とした。本研究ではベースライン時のIIEF-5で5-17点までの患者842例をED群、18-25点までの患者677例をNO-ED群として集計した。主研究の追跡調査期間の中央値は56ヵ月であり、サブスタディーにおける両研究の追跡調査期間の中央値はそれぞれ53ヵ月、54ヵ月であった。心筋梗塞既往患者は 52.0%、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)既往患者は26.7%、糖尿病合併例は34%であった。ED群は、NO-ED群より年齢が高く、高血圧、脳卒中/TIAおよび糖尿病の有病率、ならびに下部尿路手術を受けていた割合が高かった。カルシウム拮抗薬の使用頻度がED群で高かったが、それ以外のスタチン、抗血小板薬、降圧薬の薬物療法にはED群とNO-ED群との間に差はみられなかった。(表1)
ED群の全死亡は11.3%、NO-ED群は5.6%であった(ハザード比2.04、95%信頼区間1.40〜2.97、p=0.0002)。主要転帰(脳・心血管死、心筋梗塞、脳卒中、および入院を要する心不全の複合転帰)は、ED群では16.2%に発症したのに対して、NO-ED群では10.3%で、ハザード比は1.62(95%信頼区間1.22〜2.17、p=0.001)であった。ED群は脳・心血管死(p<0.0009)、心筋梗塞の発症(p<0.04)も有意に高く、入院を要する心不全ならびに脳卒中の発症は有意差がないものの、ED群のほうが高い傾向にあった。背景因子のバラツキを補正してもなお上記と同様の結果であった(図1)。
カプランマイヤ曲線の結果を図2に示す、ED群はNO-ED群に比べて有意に全死亡率が高かった(p=0.0001)。主要転帰(p=0.0008)、脳・心血管死(p=0.0006)、心筋梗塞(p=0.046)も有意差が認められた。また、全死亡と主要評価項目をED重症度別にみるとEDの重症度に応じてリスクが段階的に増加することが認められた(図3)。
本研究において脳・心血管系疾患の高リスク患者において、全死亡ならびに脳・心血管死、心筋梗塞、脳卒中、および入院を要する心不全からなる複合転帰を EDによって、高率に予測できることが示された。血管内皮障害やアテローム性動脈硬化症の初期段階として将来の死亡や脳・心血管系疾患の予測因子としての ED診断は、特に脳・心血管系疾患を有する高リスク患者にとって重要な意味を持つだろう。
Circulation. 2010 Mar 30;121(12):1439-46. Epub 2010 Mar 15. PubMed